誰かが、ずっと呼んでいた。

 彷徨い続けた暗闇は、どこまで行っても終わりが見えなくて。

 何時のことか…歩くことを止めて、その場に座り込み、ただ呆然としていた。

 でも、私を呼ぶ声が聞こえたから。

 誰が呼んでいるのか、それは分からない。

 だけど、その声が呼ぶほうに、私は導かれるように歩み出す。

 

 

 

 

 微かに聞こえる、寂しげな声。

 何処にいるんだろう?

 泣いてるのかな?

 その子を探して、何も見えない暗闇の中へ歩き出す。

 目前の自分の手さえ見えない場所だけど、怖くは無かった。

 

 

 

 

 

 

「…起きてよ、カルーア…。駄目だ、完全に熟睡してるよ…」

 起こすことを諦めて、仕方ないと言いたげに遠慮することも無くドサッと座り込む。

 少し音がしたものの、それくらいの音では目を覚ますわけが無く。

「けどまあ…いいか」

 幸い、邪魔なミモレットもいないし…カルーアの寝顔を独占して見れるというのは悪くは無い。

 すやすやと眠るその横顔は、すっかりと安心しきっているようで。

「…って、ことは僕って男として見られて無いってこと???」

 一般常識的に、異性の前でこんな無防備な姿を晒すのはどうかと思うが…。

 それとも、それだけ信頼しているということか…。

「…きっとそれだけ信頼されてるってことだよね、うん…」

 じゃないと…色々と、男のプライドとかが音を立てて崩壊しそうで。

 座った時の勢い…というより震動で、だろうか。

 僅かに彼女の身体がこちらに傾き、あわや倒れこみそうになるのを手で支えて防ぐ。

 そのまま、起こさないように静かに、自分の膝を貸す。世間一般で言う膝枕状態だ。

「出来れば僕がしてもらいたかったかも」

 つい、本能に素直な言葉が口をついて出る。

 こうして、近くでゆっくりと見たことがほとんどないからだろうけど。

「…綺麗な髪だよなぁ」

 照明の光を反射する金色の髪は、触れたらいけないような気がして。

 誰もいないのを、何故か確認して(別に後ろめたいことをするわけでもないのに…)、そっとその髪に触れてみた。

 思っていた以上に柔らかくて。よく使う例えだが、まさしく絹糸のようで。掬い上げると、サラサラと零れ落ちてゆく。

「…別に怒られない、よね?」

 誰に尋ねるわけでもない、独り言。

 ただそれだけのことに、罪深さを感じると言うのは、まだ純粋な心の持ち主だからか。

「ふぁ…ヤバ、僕まで眠くなってきた…」

 気持ちよさそうな寝顔を見ていたら、睡魔が襲ってきた。

 それに抗う気力も無く、心地よいまどろみに身を任せることにした…。

 

 

 

 

 誰かどこかで泣いていた。

 どうして泣いているんだろう? どこか怪我をしたのだろうか?

「ねえ、どうして泣いてるの?」

 届くか分からないけれど、思い切って声をかけてみた。

 そしたら、誰かがはっと振り返ったのが分かった。

 怯えた目で見てるから、どうしたら安心してくれるかなと思って。

「大丈夫だから。怖がらないで」

 こういう時、どういう言葉をかけてあげたらいいのか…。

 一生懸命、怖がらせないように頑張ったつもりだけど…。

 

 

 

 

 誰かが私を呼んでいた。

 彷徨い続けた暗闇は、どこまで行っても終わりが見えなくて。

 何時のことか…歩くことを止めて、その場に座り込み、ずっと泣いていた。

 でも、私を呼ぶ声が聞こえたから。

 誰が呼んでいるのか、それは分からない。

 だけど、この暗闇から私を掬い上げてくれる…そんな気がした。

 

 

 

 

 その子が誰なのか、分からない。

 視覚の無い世界で、頼りになるのは聴覚だけ。

 その子が何か言った。どこかで聞いたことがある。何故かそう思った。

「だから、君はずっと一人ぼっちだったの?」

 その子が頷いたのが分かった。見えないから、何となくだけど。

 友達が居なくなって、ずっと一人だったと言う。

 …どれだけの間、ずっと一人で居たんだろう。

「…じゃあ、僕が一緒に居てあげるよ」

 自然に出た言葉。何も飾らない、ただ単純な…だからこそ、重みを持った言葉。

「それなら、もう寂しくないよね?」

 

 

 

 

「ん…」

 薄ぼんやりとした視界。まだ少し鈍い感覚。

 自分が寝ていたという事実を認識するまでにかかった時間はおよそ二分。

 枕にしてはやや硬い感触に違和感を覚え、視線をずらして見て…。

「あら〜…」

 先ほどまでの自分と同じように、寝息を立てている少年の顔が。

 自分の現状を把握した上で、どうしようかと少しの間思案。そして再び目を閉じる。

「これくらいなら、甘えてもいいですわよね〜…」

 暗い闇に包まれる夢を見たけれど、でも怖くは無かった。

 その理由を悟って、また同じ夢を見れるといいなと思いながら、再び穏やかな寝息が二つになる。

 

 

 

 

「一人だと、怖いかもしれない。でも、二人なら怖くない」

 他に誰も居ないわけじゃないから。一人ぼっちじゃないから、暗闇だって怖くは無い。

 怖いと思うから、闇は恐怖を纏う。しかし、夢を見るのは眠りと言う闇の中にあってのこと。

 闇を怖れるな、それを受け入れろ。そうすれば、闇もまた受け入れる。

「これまで一人で寂しい思いをした分だけ、いや、それ以上。ずっと僕が一緒に居てあげるよ」

 

 

 

 

 夢で見たことと、他人は嘲笑うかもしれない。

 きっと、本人達も夢だと思って軽く流してしまうだろうけれど。

 それは、本当にあったこと。確かな約束。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 あとがき

 とりあえず、ネタと勢いで書いたのでこれっぽっちも中身の無い話(苦笑)

 実際、私は何が書きたかったんだ?

 とりあえず、シチュエーション的に「真っ暗な中で泣いてる子」「膝枕」を使いたかった。ただそれだけ。

 書き始めた当初はベタベタに甘い話をー!!とか言ってたのに(苦笑)

 やっぱりしっかりとネタは考えないとね…勢いだけで書いたら駄目ですわ…(汗)